モビルスーツデッキ揚陸艦グリフォンは、「DAI-TOWN 3」の係留ベイを離れてゆっくりと加速を始める。もう1隻のペガサスタイプ、ユニコーンとランデブーするため、ユニコーンよりも先に地球降下ポイントに到達しなくてはならない。モビル・ダイヴを楽しむためにユニコーンに乗り込んだ乗客は、それぞれが搭乗するモビルダイバーやパイロットと記念撮影をしたり、気の早い者は自らコクピットの操縦席に腰を下ろしたりと、落ち着きがないものだ。 おそらく今日も、客たちはそのような時間を過ごしているに違いない。 こちらはそれどころではない。号令とシグナルサインとアナウンスの渦、これに機体整備のさまざまな雑音が入り混じった戦争状態である。 ブリッジを除く艦内の各ブロックを案内されて一番最後にここへたどり着いたヤマト・コバヤシは、案の定目をむき、圧倒されて立ちつくした。 遠心力によって疑似重力を作り出す重力ブロックには、ちょっとしたリゾートホテル並のグレードを持つレストルームやレストランなどがあり、そこで仕事をしているスタッフも品のよい、訓練されたホテルマンそのものだった。 接客設備の豪華さから、いかにもレジャー用に改修された船だと思っていたが、このハンガーは軍用当時そのままの様相を呈している。 「すごいでしょ。今日はAチームの当番だから、扱う機体がまちまちなのよ。中には規格品といっても専用部品や工具を使わなくちゃいけないのがあるから、ハンガー中部品市みたいになっちゃう」 ヒトミはこういう環境には慣れてしまったのだろう。平然とした顔でキャットウォークから下の様子をのぞき込む。 モビルスーツデッキとも呼ばれるハンガーは、ペガサスタイプの場合は左右の両舷に一対の空間が確保されている。その天井の高さは30mはあるだろう。身長にして20mクラスの人型汎用戦闘機、モビルスーツを格納、運搬するという独特の機能のために、これだけの空間が要求されるのだ。 この直方体の箱の中には最大4機のモビルスーツを格納でき、輸送時にはそれぞれメンテナンスベッドに固定される。グリフォンには都合8機の搭載が可能なわけだが、現時点ではザクタイプとマラサイタイプが各2機、そしてようやくもう1機、リゲルグ・シルエットという機体が配備されたばかりだ。 D3が保有するモビルスーツは、公式にはあと5機が登録されていて、これはBチームとしてステーションで待機中である。 モビルダイバーの方も、キャプテン・トドロキが言っているとおり、ユニコーン所属で10機を保有している。 しかし、パイロットの頭数はこれらの機体数に合わされてはいない。 Aチームには実際には3人しかパイロットは存在せず、ザクを扱う2人は第2ヒートでマラサイに乗り換えることになる。Bチームはさらに悲惨でたった2人、これにAチームから1人が当番で居残るという数の調整をやりくりしているのだ。 モビルダイバー側のパイロットも同じようなものだ。パイロットや乗客の生命維持に関わる問題なので、現在は機体を整備するメカニックの数の方が安定している。 営業開始半年で、そこそこの右上がり人気を得ているというのに、現場の人材は思うように確保できていない。ヤマトが就学年齢途中でも就職できるというのは、この時代のシステムの範疇ではあるが、受け入れる側は真面目な話、猫の手も借りたい場所であったのだ。 ハンガー内はまだ気密状態が保たれており、ノーマルスーツのヘルメットを着用しなくても窒息することはない。が、これならヘルメットを被っていたほうが、騒音だけでも遮断できるだろうとヤマトは思う。 「ザクとゲルググを運用するんですか」 ヤマトはいくつかの機体のうち、機動状態になっている2種類のモビルスーツを確認した。 2機並んでいるザクは同じカラーリングを施しているが、ヒトミの言うように前方の06R型に対して、後方の機体はポピュラーなF型である。そして最前列にはゲルググが後ろ姿を見せている。 ゲルググの機体はちょっと違うような気もする。資料で知っているものとは、両肩のアーマーの張り出しが異様に巨大なのだ。そのために、メンテナンスベッドがザクよりもハンガー中心部にずらして架設されている。 通常、モビルスーツはここから外へ射出されるのだが、この第1デッキではメンテナンスベッドの左側にカタパルトレーンが設営されており、カタパルトレーンがデッキの中心線に当たる。“ちょっと変わったゲルググ”のベッドは、そのままカタパルトレーンにおろせるような位置関係になっている。両肩のアーマーが大きすぎるため、こうしないとハンガー内に収容できないのだ。 「おととい届いたばかりで、急ごしらえでああなっちゃったみたいよ。あとで一番後ろ側に場所替えするんだって」 モビルスーツたちは、それぞれの点検ベッドの前で自立状態にある。ヤマトたちはその後ろ姿を見ている形となるが、ヒトミが説明するように、2機並んだザクタイプのさらに前にあるゲルググの機体が巨大に見えるほど、肩の張り出しは大きかった。 「別にジオン公国スタイルを模倣してるわけじゃないんだけど、人気のある機体って、あるのよね」 ヒトミが説明を付け加える。そこへハンガーの床面からジャンプしてきた人影がふわりと2人の前に現れて、言った。 「ザクは第1ヒートだけに使うのさ。第2ヒートでは、右舷のハンガーに置いてあるマラサイにスイッチされる。出っぱなしなのはリゲルグ・シルエットだ。あれはゲルググじゃない。めんどくさいからリゲルグと呼んでるけどな」 ヤマトたちに気がついたチーフメカニックのエディが、下のフロアから上がってきたのであった。ヒトミがお互いを紹介する。 「ようこそグリフォンへ、みっちり仕込むからがんばることだな」 「よろしくお願いします。あの・・・僕は何かしなくていいんでしょうか」 「ふむ・・・今んとこ人手は足りなくても何とかなってるんだが、1機だけ厄介なのがあって、テレメーターの調整が間に合わないでいる。パイロットがあてにならないんで誰か同乗して、チェックシートに書き込みをやらなきゃならんのだ」 エディは腕組みしながら困ったようにつぶやく。 「それくらいの仕事なら、僕にやらせてください」 「MSに乗ったことはあるのか?」 エディに問われて、ヤマトはちょっと考えるようにうつむいたが、すぐに顔を上げて答えた。 「ジムには何度か乗せてもらいました。ただ実機操縦はまだ40時間くらいで、全部地上でのミッションですけど。それとは別に、リニアシート型のシミュレーターでは3年くらい練習しています」 その答えは、全くの新人というレベル内ではエディを満足させるものだったが、それと同時に、軍属やテストパイロット候補生でもない、年端もいかない少年が、なぜそれほど充実した訓練を行えたのかという疑問が生じた。 作業用プチモビルスーツの免許は取得してあるということだが、それと戦闘用モビルスーツの操縦とは、基本操作は同じであっても実際には別物なのだ。 「親父さんのコネでそんなにチャンスがあったってことか?」 「あの・・・広い意味ではそうかもしれませんが、父は僕が生まれたすぐ後に戦死しましたので、父からは直接は手ほどきを受けてはいません。・・・操縦訓練のことは詳しく説明した方がいいでしょうか?」 「・・・いや、今はいい。実機40時間なら、基礎メンテナンスのチェックリスト作成はできるということだろ?」 履歴書のコピーはざっと読んである。この新入りの父親の経歴からすれば、どこかにはある程度の後ろ盾があってもおかしくはない。ひょっとすると本当にニュータイプの資質も受け継いでいるかもしれないが、そう思いこむのは早計だろうと、エディは考えた。 そういう面白みを秘めた見習い生を試すなら、リゲルグ・シルエットに同乗させるというのは、ちょうどいいやり方かもしれないと思った。キャプテンは怒るだろうが、なに、キャプテン自身が現場のあり方には柔軟性を認めている。 コネであれ資質であれ、要は使いものになるかどうかだ。猫の手も借りたいのは本当のことだが、採用した新人の能力が猫並みでは困る。重力下での実機経験については、宇宙空間ではあてにならない。加速Gなどの心配は残るが、リゲルグ・シルエットはロールアウトしたての機体だ。いきなり壊されてはたまらないので、運用に支障のない程度でデチューンしてある。パイロットが無茶をしてもたいした戦速にはならない。 「よしわかった。ヤマト・コバヤシ、君にリゲルグへの同乗を命じる。仕事はサイコミュのチェックだ。このシートにチェックリストが書いてあるから、三段階評価で記入してこい」 「はい、がんばります!」 「リゲルグ聞こえるか、サイコミュのチェック要員を同乗させる。射出は一番後に変更するから、今のうちに補助シートをセットアップしておけ。いいか、慣らしだってことも頭に入れて、絶対に無茶やるんじゃねえぞ」 エディはインカム越しに最前列に並んだピンクの機体に向かって叫んだ。 ザクタイプも淡いパープルカラーで塗装され、軍用に比べると派手な機体だが、ピンクに塗られたモビルスーツというのは、やはり一番目立つ。 「では行け、初仕事だ!」 「ありがとうございます」 チェックボードを手にしたヤマトは、リゲルグ・シルエットまでの距離と高低差を目測しながらキャットウォークの途切れた昇降タラップの場所まで移動し、そこから床を蹴った。 靴底のベルクロがバリバリと床から剥がされ、ヤマトは慣性で宙を飛ぶ。これも航空機を使った無重力訓練で掴んだ遊泳方法だが、自分で思っていたよりも速度がついてしまい、手前のザクにぶつかりそうな恐怖感がよぎる。 「あれっ?」 2機並んだザクタイプの横を通り過ぎるとき、ヤマトはザクの右肩に装着されている盾の部分に、ドクロのマークがペイントされていることに気がついた。キャットウォークからはザクの背中と点検ベッドに隠れて見えなかったが、同じマークがリゲルグ・シルエットの肩のアーマーにも描かれていた。 まるで海賊じゃないか。 ヤマトはそう思った。 実は彼は、自分が乗り組んだ船の運用目的を知らされていない。モビルダイヴの宣伝行為の中でも、意図的に伏せられている部分がある。客の口コミ情報までは防ぎきれないとしても、この船にはモビルダイヴを二度おもしろくする演出目的が与えられているのだ。 「あんたが見習い生? この子の初飛行だから、よろしく面倒みてね」 リゲルグ・シルエットのコクピットハッチを開けて身を乗り出していたパイロットは、ヤマトより少し年上に見える金髪の少女であった。 「あたしはリンク・P・プルサード。名前は嫌いだからプルって呼んで」 「ヤマト・コバヤシです。よろしくお願いします」 「ガルバルディがもとになってる機体だから、窮屈だけどがまんしてね」 プルはヤマトを乗り込ませるために一度機体の外に出る。入れ替わってコクピット内部に滑り込んだヤマトは、リニアシートタイプの球体コクピットが、ノーマルスーツを着用した状態ではかなり狭いことを知った。 それはそうだ。本来、モビルスーツのコクピットはパイロット以外の人間を乗せられるようにはできていない。0090年代に入ってからのモビルスーツならば、機体の大型化に伴って球体コクピットのサイズにも余裕が生まれているが、意図して複座式に開発しているわけではない。 この点は特に、地球連邦軍が採用した機体の特徴である。 これに対して、ジオン公国が開発した史上初のモビルスーツ・ザクは基本的には1人乗りだが、その操縦席は腹部右側にオフセットされている。左側から乗り込むように設計されているため、ここに人を乗せられなくもないし、タイプによっては左側にも予備席があり、操縦系統のバックアップが可能となっているものもあった。 ヤマトが同乗するリゲルグ・シルエットは、ジオン公国のゲルググタイプをニュータイプ専用機としてカスタム化する方向で、後のネオジオンによって開発されたモビルスーツ・リゲルグのことであるが、グリフォンに配備されているこの機体は素性が異なる。 連邦軍が0080年代に開発した、ガルバルディβというモビルスーツの機体を使い、装甲だけをリゲルグのシルエットに似せて交換しているシロモノだった。ガルバルディシリーズは、旧ジオンのモビルスーツ技術で最も優れていたと言われるゲルググを規範に製作されたものだ。レプリカのリゲルグを作り上げる素材としては、的外れではない。 どちらにしても、コクピットは狭い。ただ、レプリカであってもリゲルグを登用するからには、ゲルググタイプとは区別をしたいという開発サイドの趣味が高じ、サイコミュ連動のギミックもわざわざ装備している。このため、ゲルググタイプには標準装備とされている防弾用シールドと、ビームライフルは排除されていた。サイコミュによる遠隔操作機器が、これに代わるわけだ。 ヤマトはそのチェックを命じられたわけである。 決して難しい仕事ではないが、やせ我慢のように元気さと明るさを意識して振る舞ってしまったことが、彼にとっては反省材料とも言えた。もっともエディはそのあたりのメンタル部分も見抜いていたと思われるが・・・ 『5分後にハンガー内の圧力調整にはいる。ノーマルスーツを着用していない者は速やかに詰め所に引き上げること。MSはハッチを閉じて待機せよ』 艦内アナウンスが流れ、リゲルグ・シルエットの乗降用ハッチが閉じられる。球体コクピットの内面に張りめぐらされた全方位スクリーンが、現在はパイロットの前面のみをフロントモニターとして画像投影している。これ以外のスクリーンは、室内照明に代わって、乳白色の光を浮かび上がらせていた。 「宇宙は初めて?」 プルに聞かれて、ヤマトは短く「はい」と答えた。プルは「それでいきなりMSに乗るなんて、無茶するわねぇ」と驚いた。 「戦争するわけじゃないから、ヘルメットのバイザーはあげたままで大丈夫だよ。メットだけはじゃまになるから被っててね」 プルはシートに収まりながら、コンソールのスイッチをいくつかONにして、最終チェックを始める。 「サイコミュのモニター用に、回線を一ついただけませんか」 ヤマトはチェックシートを固定したボードが、携帯パソコンの裏側であることに気がつき、ターミナルアダプターを引き出しながらプルに頼んだ。プルはアダプターコードを受け取り、コンソール下のボックスのふたを開けてジャックをつなぐ。 「これでそっちの端末に情報が行くわ」 「了解しました・・・ でも、なんでグリフォン側は通信システムでモニターしないんでしょうね」 「してるわよ、たぶん。あんたが乗りたいって言ったから、チーフが仕事をくれたんじゃないのかな」 えっ、そうなのか? と、ヤマトはびっくりして顔を上げ、リニアシートのフレームにヘルメットをぶつけてしまった。 「みんなのいるところでチェックシートに記入させられるよりは、気が散らなくていいじゃない。それってきっと、あんたの適性試験みたいなものよ」 「やっぱりそうでしょうね」 そこへ、誰か知らない男の声で、 『エディっ、船長が乗船許可も下ろしてないのに新米をMSに乗せるたぁ、どういう考えだっ』 という怒鳴り声が飛び込んできた。 肉声ではなく、コクピット内の通信端末がキャッチした、グリフォン全艦に響きわたるオープンチャンネルの会話だ。 「今のがこの船のキャプテン、シン・トドロキ」 プルが笑い声で紹介する。 『まあまあ、使い者になるかならないかは早く知っときたいんで、いいじゃないですか。ボルトとナット磨かせるのが新人教育のイロハってのは、昔の話ですぜ』 聞き覚えのある声の返事が、すかさず流れる。 『ヤマトっ、ヤマト・コバヤシっ、聞こえてたら返事しろ!』 いきなり対話が自分に向けられて、ヤマトはあわててヘルメットの無線装置をスイッチした。 「き、聞こえます、ヤマトです!」 『船長のトドロキだ。カラバで君の親父さんに世話になった。そういう話の掴みと段取りを考えてたのに、みーんなぶちこわしやがって。あとでこってり説教してやるから覚悟しとけよ』 脅しなのかからかっているのか微妙な口調だ。が、会話の途中でエディの笑い声も混信していたし、プルも声を上げて笑っている。とりあえずヤマトは、 「失礼しましたっ、よろしくお願いします!」 と返答する。 『8分後に射出する。言っとくがプルの操縦は雑じゃあないが荒っぽい。リゲルグタイプは仕方無しに専用で手に入れたくらいだ。もみくちゃにされてもみっともない状態で帰って来るんじゃねえぞ』 キャプテン・トドロキはそれだけ告げて回線を切ったようだ。 「なによぉ、失礼ね。専用で用意するならせめて本物持ってきなさいよ。って言いたいとこだけど、先々月1機つぶしちゃったからなあ」 プルは何気なく、しかしとんでもないことを口にした。聞くべきではないと感じたが、ヤマトはついそのことを聞いてしまった。 「1機つぶしたって?」 「キャプテンのZプラスをちょっとね」 やっぱり聞かなければよかったと、ヤマトはびびるが、次の言葉は管制アナウンスに遮られてしまった。 『各MS、射出カタパルトへ。最終点呼を取る。デビッド・アルテナ?』 『ザク06R-01スタンディング・バイ』 『タクマ・アオノ?』 『ザクF02スタンディング・バイ』 『エル・ピー・プル?』 「おっと、時間だ。リゲルグもどきスタンディング・バイ!」 『プルっ、もどきは余計だ!』 「だってえ」 と文句を言われ、言い返しながらも、専用機を受領したプルは、今日は上機嫌なのだ。少なくともヤマトにはそう聞こえる。 ヤマトはリニアシートを支えるアームに、本当にとりあえず付属でついている補助シートに腰と背中だけをあてがい、両足を投げ出す格好で携帯端末を膝の上に固定した。一応、体をホールドするベルトも締め付けているが、これなら床に寝そべってくくりつけてもらった方が安定しそうな気になる。 「射出のGはシャトルの打ち上げよりもきついわ。これだけはあたしの操縦じゃコントロールできないから気をつけてね」 「分かりました」 「じゃあ、しっかり行きましょ」 プルとの会話が一区切りしたところへ、再びキャプテンからの通信が流れ出した。 『トドロキだ。全艦に告げる。少ない人手でだいぶ仕事のリズムにも慣れてきたところだが、なにはさておき安全第一だ。何事も起きないとマンネリ化するが、油断こそが隙を作る。万事気をつけて業務にあたってくれ』 「キャプテンも民間的なものの言い方が上手になってきたわよ」 プルが独り言を言う。が、キャプテン・トドロキのアナウンスは、ここから突然豹変する。 『野郎ども! 客は今日も上玉の金持ちだぜ。最低限3機はとっつかまえて地球におろすな、海賊船グリフォンの恐ろしさを見せつけてやれっ!』 ええっ? と、ヤマトは自分の耳を疑った。 それでもオープンチャンネルからは、各ブロックの乗組員が口にする「おおーっ」という歓声が続いている。 さらにリゲルグ・シルエットの全方位スクリーンが270度展開して、左側を狭そうにザクが移動していくのが映し出された。 ザクは「よっこらしょ」というようなしぐさで、ゆっくりとカタパルト上にかがみ込むと、そのまま滑るように射出されていく。 「あ、あのっ、プルさん」 『ザク01、02射出確認。続いてリゲルグ、ユニコーンを目視で確認後に射出する』 「了解っ、ヤマト君、すぐに射出よ。舌を噛むからだまってて」 プルにぴしゃりと言われて、ヤマトは聞きたいことを聞けずに、沈黙するしかなくなった。 海賊船グリフォン!? そんなことは何も聞いていないぞ。どうなっちゃうんだ? リゲルグ・シルエットが点検ベッドから移動し、射出カタパルトのラッチに両足を乗せた。プルのフットレバーの踏み込みと手元の操作によって、機体が沈み込むのがわかる。 ヤマトは声にならない言葉を飲み下し、携帯PCの端をぎゅっと握りしめた。 『リゲルグ、ユニコーンを目視で確認。先方のMDは既に離艦している。狙いは1番機と3番機』 「了解」 『5秒後に射出カウントダウン』 アナウンスの肉声に続いてすぐさま、人工音声によるテンカウントが開始された。 本当に、もう後戻りはできない。ヤマトは身構えて事態の動きに備えた。 ジャンル別一覧
人気のクチコミテーマ
|